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シリーズ・「摂津国衆、塩川氏の誤解を解く」:<番外編>山下の「すずさん」と空襲と①


山下の「すずさん」と空襲と①
~映画から呼び起こされた記憶~

今、この稿を検討している平成二十八(2016)年11月~平成二十九(2017)年2月にかけて、アニメーション映画「この世界の片隅に」(原作・こうの史代、監督・脚本片渕須直)が地道にロングランヒットしています。
物語は昭和初期を経て戦争末期から敗戦直後にかけての時代、広島から海軍の街である呉(くれ)に嫁いだ主人公が如何に生きたかが、克明に調査、復元された当時の日時、景観の変化、社会、軍事、戦災、生活、自然などの上に深遠な演出で描かれています。

映画の詳細については本稿から逸れるので触れませんが、この作品で原作者、監督共々、些細な要素にいたるまで史実の膨大な調査の手間をかけた上で「さりげなく」作品を描いていることは特筆に価します。史実、細部にこだわる事自体は目的ではなく、本当の目的である「自分が生きている「この世界」とはいったい何なのか」そして「「この世界」の一部である自分とはいったい何者か」ということを客観的に指し示してくれる有効な「手段」であるからでしょう。

それから、この映画のヒロインの名前がなんと「すず」なのです!。
そして映画の「すずさん」は呉でアメリカ軍機による苛烈な空襲を体験します。

私は昨年11月に初めてこの映画を観て以来、「ある記憶」がよみがって来て落ち着かず、寿々姫について書いていた筆が止まってしまいました。原作も購入し、映画もその後3回見直しました。

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去る19年前の平成十(1998)年6月2日、私は1年前から作り始めた「獅子山城と山下町の推定復元模型」製作の参考にと、山下町の旧自治会館で「聞き取り調査」を開きました。
お集まりいただいたのは戦前の山下、下財を知る藤巴力男氏、原喜代治氏、増田実氏(故人)、岡本弥氏(故人)、増井政夫氏(故人)、仲下晴暢氏、菊池浩平氏、井上明氏の8名の方々。

等高線を積み上げただけの作りかけ(今だに作りかけですが…*補注参照)の地形模型を畳部屋の真中に据えてタタキ台にし、近現代における開発以前の地形のディテールや生活状況、伝承などを聞き出し、遠い16世紀後半のイメージ復元の拠り所を得たかったのでした。

ところが開始10分ほどして菊池浩平氏が、戦争末期に山下町がアメリカ軍戦闘機の機銃掃射を受けた事を思い出され、熱心に地形模型と飛行機の手まねを使って当時の状況を説明されたのです!。会場は一気に空襲時の記憶に引き込まれてエキサイトしました。
幸い、この機銃掃射では山下に犠牲者も怪我人も出ませんでした。
「こんな小さな町にも空襲が…?」よそ者の私には初めて聞く話でした。

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この機銃掃射のことは「川西市史」には直接載っておらず、他に書かれたものも未見なので、いつか記述しておく必要性を感じ続けていたので、今回の映画の中での「空襲体験」がその気持ちが呼び覚ましたのでしょう。
こういった内容は不慣れながら、この証言の再現と、文献やネットで得た知見を加えてこの空襲のことを記載してみたいと思います。正直こういった近代の史実は情報の要素が多すぎて泥沼にはまってしまい、改めて映画の事前調査の労力に想いを馳せた次第です。
以下、粗い記述と思われますが、間違いや補間する情報等ありましたら、御一報いただければ幸いです。

(冒頭画像は即席安易ながら、戦後の昭和25年の米軍空中写真に写った山下町~笹部と模型(プラモデル)との合成。山下町の短冊状地割が印象的。)

②へつづく。

(補注:本来は城跡の測量だけ終えたら(これだけでも密林(当時)の中を50回程登りましたが)気楽に典型的な中世の山城を想像復元して終わるはずでした。しかし、調査の中で元亀~天正頃の瓦片や石垣痕跡を見つけたり、山下町が城下町としか考えられないなど、このシリーズ第1回プロローグで述べたような「大きな歴史の修正の必要性」に出会ってしまい、調査だけで泥沼にはまって(いつもながら…)鬱々として模型製作が20年近く止まってあちこちに不義理しております。)

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